冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
みんなの手本にならないといけないみたいに言われてハッとした。


それってやっぱり、どんなに否定しても私が理事長の娘だからなんだろうなって気がするから。


だからせめて運動会が終わるくらいまでは千景くんとは会わないほうがいいかなって決心して我慢していた。


ほんとは毎日だって会いたいけど。


委員長として頑張る姿を見せたら河井先生だって気が変わるかもしれない。


付き合っている人がいても、みんなのお手本になれるって示したい。


だから、いまは少し寂しいけど。


もう少しの間、彼に会うのは我慢しなきゃ。




「花―、体育祭当日のことなんだけどさ」


2時間目の休み時間が終わると拓海くんが話しかけてきた。


「うん」


手渡された一枚の用紙に視線を落とした。


「地域の人たちへの挨拶文なんだけどこんな感じでいいかな?」


文章をチェックしたら凄く丁寧で完璧だった。
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