冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
ちえりちゃんはニコッと笑いかけてくれたけど。


元どおりだなんて、そう簡単に思えるわけなくて。


気まずくてなんて答えたらいいかわからない。


「じゃ花行こう」


千景くんが声をかけてくれたから小さく頷くのが精一杯。


ああ私どうしちゃったんだろう。


彼がそばにいて嬉しいのに、それと同じくらい寂しい。


だからちっとも明るく振る舞えない。


「見ろよ花、俺たち以外にも学科の違う同士のカップルもいるみたいだ」


「あ、うん。ほんとだね」


見れば確かにそういうカップルが3組ほどいる。


うちとは反対で男子がセレブ科で女子が普通学科の組み合わせみたいだ。


「あのカップル達も花が頑張ったおかげでこうしてこの競技に参加できてるんだよな。
それって、凄いことだよな」


千景くんはしみじみとそんなことを言ってくれるから、胸がジンとあったかくなった。
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