いつか咲う恋になれ
「そろそろ帰ろうか」

真尋先輩はベンチから立ち上がり、私に手を差し出してくる。その手に私は自分の手を乗せて、楽しかったデートの時間は終わった。

さっきの話が気になり過ぎて頭の中がモヤモヤしてしまい、帰りはあまり会話が弾まないまま私の家に着く。今日も真尋先輩は私の家の前まで送ってくれた。

「今日は凄く楽しかったです。ありがとうございました」

「俺も楽しかったよ。今日は付き合ってくれてありがとう」

そして私の頭にポンと手を乗せ『またね』と微笑んだ。

そのまま真尋先輩は帰ろうと私に背を向けて歩き出したけど、ピタッと立ち止まってクルッと振り向いた。

「さっきの話、あれ穂花ちゃんの事だから」

白い息を吐きながらそれだけ言って真尋先輩は帰って行く。

私は真尋先輩が見えなくなった後もしばらく家の外でボーっとしていた。

真尋先輩の恋愛かもしれない感情が私に向けられていたなんて……。

冷たい夜風も気にならないくらい、私は身体中が熱くなった。

部屋に戻ってからもずっと真尋先輩の事が頭から離れない。桜色のクッションをギュッと抱きしめながらデートの余韻に浸っていた。
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