一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 晴れた、空のような瞳。
 まじりけのないブルートパーズが二つ、私を見た。
 ……と思ったのは、私だけではなかったらしい。

『Hallo』

 彼にちょいちょいと手招きされて、周りの女子たちが色めきたつ。
 ふらふら……とニ・三人が近寄ろうと歩き始めた途端、彼は柔らかい表情を引っ込め、ビジネススマイルみたいな顔になって。

『Nein』

 きっぱりと言った。
ドイツ語。
 日本語はおろか、あえて英語を使わないってことは余計な会話をしたくないってこと?
 あらら、女嫌い?
 なんとなく残念に思った。

『Junge Dame, du?(お嬢さん、君だ)』

 彼の目と手はまっすぐに私……の楽器を指していた。

『ich?(私)』

 合奏者を探してたのね。
 いいわ、セッションは好きよ。
 テクニックは彼のほうが上だけど、遠慮するって言葉は私の辞書にはないの。

『Verstanden(りょーかい)』

 私が彼の近くに寄っていくと、彼はピアノに向き直った。

『Ich bin Nate(僕はネイト)』
『Rena(玲奈よ)』
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