一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 目が覚めたときには、だいぶましな気分になっていた。
 コーヒーメーカーで気に入りの豆を挽き、淹れたてを飲めば、スッキリしてくる。
 母、ヘルガの予定を確認すると、日本では残り三か所ほどのコンサートとレセプションをこなすことになっている。
 彼女ご指名の庭園でのデートをするため、日本へやってきた。
 ヘルガはその後、別の国へと移動する。
 
「これがなければウイーンのほうが楽だったな」
 
 アメリカにある日本庭園だってなかなかだと思うし、ヘルガの住んでいるウイーンにだって日本庭園はある。
 だけど、彼女はその国の土壌を知ったうえで自分という花を吹かせたいのだ。
 
「仕方ないか」

 僕ら家族は母を崇拝している。
 家族が彼女と交わした約束『いつなんどきでも、貴女(ヘルガ)が呼べば僕たちは赴く』を考えれば、自然と笑みが浮かぶ。
 
「少し、うろつくか」
 
 トランクから適当な服を引っ張り出した。
< 41 / 224 >

この作品をシェア

pagetop