一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 日本が苦手だ。
 人も、空気も。
 穣のようにいい男もいるし、完全に自分の狭量な感情なのはわかっているが。
 技術も資本力も、台頭してきている他のアジア諸国に押されつつあるが、まだ日本を軽く扱うわけにはいかない。
 だが。

「相変わらず、この時期は空気が重いな」
 
 出そうになったため息を慌てて押し殺す。
 空港から日本のこのホテルまで可能な限り、快適性優先の経路を使った。

 我が社の拠点、L.A.に雨が降るのはほぼ一月から三月。
 それ以外はカラッとしているから四月以降に日本に来ると、異質に感じる。
 スカッシュに水泳に乗馬。
 スケジュールの合間はなるべく体を動かしたいが、移動日だけは億劫だ。
 一日目はなにも考えず空気に慣れる日にしているが、今回の来日はプライベートだ。ヘルガとの約束以外はのんびりとしよう。
 
「はあぁ……っ」
 
 チェックインして、部屋に入ると自然と大きな息を吐き出してしまう。
 世界的企業を預る人間として、どんな弱みも見せる訳にはいかない。
 
 まずはシャワーだ。
 ネクタイを緩めワイシャツを脱ぎ捨てた。
 生まれたままの姿になり、熱めのシャワーにうたれると、少しは楽になる。
 バスローブを羽織り、バーカウンターへ歩く。
 頼んでおいたブランディをショットグラスに注ぎ、一気に煽った。
 頭がぼうっとし始めたので、バスローブを脱いでベッドに潜り込む。
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