一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 指導教授からは、『培ったキャリアを生かして、作業療法士やリトミック教師を目指したらどうか』と勧められた。
 けれど薬そのものに興味が出始めた私は、卒業してからドラッグストアで働きはじめた。

 …… いまさら、お父様に甘えるわけにはいかなかった。
 私は多賀見製薬に入れるチャンスを、薬剤師や研究員として薬に携われる機会を自ら潰してしまっただもの。
 

 働いてみて、甘かったことを思い知る。
 お客様から症状を訴えられて適した薬を訊ねられても案内出来ない。
 何度もそんなことがあり、私は自分が情けなくなった。
 ふと、考えた。
『薬に携わることについて、勉強する方法はないかな?』

 調べたら、調剤薬局事務という資格があるらしい。

「薬についての基礎知識や薬に関する法律、医療保険制度のしくみなどが学べる……。アリだけど」 

 魅力的だけど、薬局や病院に勤めている人向きな気がした。
 私は、ドラッグストアに薬を買いにくるお客様の役に立ちたい。
 なおも調べていたら、『登録販売者』という単語が目の中に飛び込んできた。

 登録販売者とは、ドラッグストアや薬局などで一般用医薬品(『OTC(Over The Counter=オーバー・ザ・カウンター)医薬品』と呼ばれている)を販売できる資格だ。
 おそらくは対面販売出来る薬のことを指し、お医者様が処方してくれる「医療用医薬品」とは異なるのだろうと。

「あ。これ、いいかも!」

 受験のときぶりに勉強して「登録販売者」の資格を取得した。
 
 
 OTC医薬品には、第一類から第三類まである。
 
 第一類が一番効果が高い分、副作用の危険度も高くなる。
 取扱も注意する必要があって、購入者の手に届かない場所に保管されてなくてはならない。
 原則、売るのは薬剤師に限られ、販売時には必ず購入者に対して薬についての情報をレクチャーをする必要がある。

 三年後、薬剤師の管理・指導のもとで、第1類医薬品を販売できるようになった私は、覚悟を決めた。
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