一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 ネイトが片眉をあげた。

「ストイックなパンツスーツで、なまめかしい君のボディラインをアピールする作戦だったのか? あざといな」
「違っ……」

 なまめかしいとか、あざといなんて日本語、どうして知ってるの。

「ジェンダーを気にせず、男の目に触れないようにするつもりだったのなら逆効果だな」
「え」

 どういうこと。

「男は気になる女性がどんな格好をしても、目が吸い寄せられる」

 たしかにネイトが破れたジーンズでカッコいいと思った。
 いかにもエグゼクティブといういでたちで現れたときには、目がハートマークになってたんじゃないかしら。

「……それは、そうかも」

 ネイトも気にしてくれた?

「野暮で体型に合ってない服装は、出来る人間との評価を遠ざける。プレゼンには不向きだな」

 う。
 私は肩幅が狭くて腰が細いくせ、バストとヒップが張っている。
 出っ張ったところに合わせると、ダボダボになってしまっていた。
 セミオーダーのところで、大きいサイズを買っては肩とウエストを詰めてもらってるけど、借りた服感がして仕方なかった。

 これらのスーツは動きやすい。
 今日のファッションショーがなければ、自分がどれくらい窮屈な服に身をつつんでいたか、気づかなかったろう。


「…… Es ist für beide Männer unangenehm, Ihren Körper zu sehen
(男共に、君の体をジロジロ見られるのは不愉快だ)」
「え?」

 聞き取れなかった。
 ネイトって、たまに独り言を言う。クセなのかな。
 
「自信は視線を跳ね返す。注目させない方法は、一つではないということさ」

 そうかも。
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