【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
たくさん抱きしめてくれた。

遼雅さんの淡いねつが思い出されて、頬が熱くなりそうだ。ぺたぺたと触ったら、壮亮にまた頭をぐちゃぐちゃに撫でられる。


「わ、そうくん」

「もういいわー、お前がどんな目に遭っても知らね。来週はちゃんと時間で来いよ。あとマドレーヌ食いたい」

「え、マドレーヌ?」

「おー。ちゃんと作って来いよ。んで、まあ……、あいつに嫌なことされたら、すぐ相談、な。わかったか?」

「……ありがとう」

「あほ、ボケ。はやく戻るぞ」


頭に触れていた手がやんわりと離される。

心配性の幼馴染に笑って頷いたら、今日もまた「笑うなブス」と咎められてしまった。

上機嫌でオフィスに戻って、すでにデスクで仕事を進めていたらしい専務に笑顔で迎え入れられる。


「たのしかったですか?」

「はい、とっても」

「それは何よりです」

「専務はもう、お仕事ですか」

「あはは。すぐに食べ終わってしまったので、すこし」

「そうですか」


休憩時間すら返上して働いているらしい。やさしい笑顔に決意をひとつ。

静かに役員室から出て、扉をやさしく閉じた。

< 180 / 354 >

この作品をシェア

pagetop