【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
えぴろーぐ


「それで、どうだい。結婚生活は」

「はい、つつがなく……というか、とてもよくしていただいています」


秘書課職員は月に一度、役員との面談が実施される。

内容は職務のことや課の問題点の洗い出し、担当役員とのコミュニケーション状況など、さまざまなことについて自由にお話するもので、私からすれば気軽なティータイムのようなものだ。

秘書課に来た当初から会長が面談相手で、面談というよりも雑談が多い気がするのは、気のせいではないだろう。

いつも美味しいショートケーキを買っておいてくれる会長は、今日もにこにこと笑いながら、遼雅さんの家庭事情に興味津々だ。

今日は遼雅さんと思いを確かめあって以来、はじめての面談だった。これまでのらりくらりと明言を避けていたものの、きちんとお礼を言いたいと思ってきたところだった。


「会長のおかげで、大切な人と、結婚することができました。本当にありがとうございます」


一言、簡潔にまとめて告げて一礼すれば、目の前のソファに座り込んでいたおじいさんがより一層たのしそうに微笑んだのが見えた。


「そうかそうか。良いことだ。きみもようやく指輪を嵌めてくるようになって……、橘くんからもつい先日、同じように礼を言われてしまったよ。わしは何もしとらんのだがなあ」


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