【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
顎の下に指先で触れて、顔の位置を固定される。
ぐっと引き寄せられたまま口づけられたら、くらくらしてとまらない。
簡単に舌が唇を割って侵入して、ぺろりと私のものに絡んでくる。
アルコールの匂いがする。
遼雅さんのにおいに混じって口内に触れて、脳がしびれてしまいそうだった。
「あんまり帰りが遅いから、怒っていますか?」
「ん、おこ、ってな、」
こころから言っているのに、信頼してくれていないのか、それとも私の回答が気に食わないのか。
くるりと体の位置を変えられて、背中に扉の冷えた感触がぶつかった。
上から見下ろす人が、声をあげる間もなくもう一度唇を寄せて、すべての言葉を食べてしまった。
「どうして遅くなるのか、おしえても、いないのに?」
どこかで、遼雅さんの鞄が落ちる音が聞こえている。
片手でフェイスラインを捕らえられたまま、もう片方の手を壁につかれたら、もう、逃げる方法も浮かばない。
必死に言われた言葉の意味を手繰り寄せて、それでもどうして遼雅さんがこんなことを言っているのか、理解できそうになかった。
遼雅さんは毎日、今からどれくらいで帰れる、と連絡を入れるようにしてくれている。
それのどこに怒るような要素があるのだろうか。