【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
怒っていると言うよりも、すこし拗ねたような表情を作った人が、私の言葉でますます微妙そうな顔をしてしまう。

その顔が演技なら、遼雅さんは本当にすごい人だ。


「大事なことだよ。……柚葉さんがもう、俺のものになってることは、覆せない」

「それは、」

「誰にも覆せない事実です」


二度言われて、さすがにうなずいた。


「きみの名前は?」

「ええと……、たちばな、ゆずは、です」

「旦那さんの名前は?」

「りょうがさん、です」

「正解です。かわいいから、今回は見逃します」

「ありがとうございます……?」

「ちゃんと覚えてください。約束です」


さっき私がしたように、やさしく頭を撫でられる。その手のあたたかさで胸があまく疼いてしまうのだ。


瞳があつすぎる。

声も言葉も、ずっとあまい。

頷いたら、上機嫌な遼雅さんが、もう一度私の唇を吸って笑った。


「ゆずは、抱きしめていい?」


どうしたら、こんなにも人をあまやかせる人に育つのだろう。

たまらずもう一度頷いて、やさしい腕に抱かれてしまった。全部があたたかい。いつも絶対に、やさしいところに連れ出してくれる。


「柚葉さんも、今日も頑張りましたね」

「ふふ、ありがとうございます」

「本当、可愛すぎる。――今すぐ食べちゃいたいくらい」

「それは、だめ……、です」

「じゃあ、いつならゆるしてくれますか」

「あ、う……」

「そうやって声に詰まるの、俺以外にはやらないでね」


遼雅さん以外に、こんなに困ったことなんてない。


「かわいすぎて、たぶん、襲われるから」

「もう、からかわないでください……、はやく、お風呂に入って、眠らないと!」

「うん、じゃあ、俺がベッドにつくまでに、考えておいて」

「う、それ、は」

「ああもう。それ、絶対俺以外にやらないでね」


——可愛すぎて、攫われそうだ。

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