半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
『まぁまぁ、落ち着いてください二人とも』

 ……彼の護衛騎士、コンラッドがいたのである。

 仲裁に入られて、言い合いも早々に終わった。いつもいなかったじゃないと問えば、普段から離していたんだとサイラスは不満げに愚痴った。

『俺、あんたみたいな人間は好きですよ~。初めまして、伯爵家の執事アサギです』
『おい、なんだそれは。俺の時と随分違うな?』
『えぇと、はい、初めましてアサギ殿。僕はコンラッドと申します。これからも付き合いがあるかと思いますので、どうぞよろしくお願い致します』
『あ~、なるほど、なるほど。どうですかねぇ。まっ、よろしく』

 のらりくらりと化かすみたいに、アサギはどちらともつかない感じで言って、コンラッドと握手を交わしていた。

「なんかコンラッド様がいると、やりづらいのよね……」

 回想して、リリアは呟いた。

 小説のヒーローとして想像していた顔と性格のせいなのか。それとも、泣くのを見られたうえ、兄のように心を救ってくれた人、のせいなのだろうか?
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