半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ～いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます！～

　それを証明するように、レイド伯爵家と領土の周りでは、不思議なことが起こるとも知られていた。

　曰く、田舎伯爵の土地は、災害に見舞われる前に嵐でかき消えてしまう。

　曰く、伯爵に害をなそうとした敵国の兵士が、空飛ぶ恐ろしい狐に襲われて全滅した。

　曰く、彼の領土に流行り病が入ってきた際、〝巨大な狐〟が空から降りてきて、瞬く間に病を消し去ってしまった……

　昔、一度、レイド伯爵家にまつわる不思議な力を、自分達に有利なものにしたいと動き出した貴族達がいた。しかしその直後、妖怪国のとある王から、イルエマニエ国王へ手紙が届いた。

『〝レイド伯爵〟は、我が恩人にして、我らがあやかしの良き理解者であり、友である。彼の意思もなく勝手に手を出そうものなら、彼を守る〝妖怪国の彼の領民〟が黙っていない。――その際、彼らが人間を食おうが殺そうが、我ら各王は止めない』

　明白な脅迫だった。当時の国王は、慌てて貴族達にレイド伯爵家には余計なことをしないよう言い聞かせた。