半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 レイド伯爵は、広い田舎の領土を愛し、代々が権力争いにも参加しない温厚派で知られていた。自ら畑仕事を行うくらいの庶民派であることでも有名だった。

 大きな問題もないまま、年月は流れていった。

 そして今代で、一人息子のツヴァイツァーが爵位を継いで、レイド伯爵となった。

 ――のだが、それから数年後、一つの大事件として王宮を騒がせることになる。

 あのレイド伯爵が、妖怪国の王の娘を妻に迎えたという。

 妖怪国のその王族の代表として、彼女自身が一度だけ、城に挨拶に来るという知らせが届いた。もう城だけでなく王都も大騒ぎになった。

 そして当日、黄金色の毛並みに、金の瞳をした美しい巨大な狐が、夫となったレイド伯爵を背に乗せて、当時即位したばかりだった国王の元へ降り立った。

 その場で人型をとった彼女は、大きな獣の耳と九本の尾を持った、この世の美貌を集めたかのような美しい女性だった。
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