半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「形ばかりの婚約が欲しいのであれば、名前をお貸しするのは構いませんよ。――ただし、今後一切、うちの可愛いリリアに〝人外派〟の人間と関わらせないよう、全ての社交について、こちらに自由を与えてくだされば、の話ですが」

 ツヴァイツァーはすぅっと睨み付けて、低い声で述べた。

 リリアの社交の参加に関しては、全て伯爵家の任意とする。そして今回のような見合いや交友の提案連絡が一切ないよう、国王権限で取り計らってもらうことを要求した。

「この際なんで、言っておきます。俺としては、可愛い娘に、クソ野郎と婚約などさせたくもないし、今後も同じような連絡が届けられても困るんですよ。なら、ここで先手を打っておきたい。つまり交渉です」
「こ、交渉……」

 ハイゼンが、深刻顔でごくりと唾を飲み込む。

 それは、隠せない怒気が滲みだしたドスの利いた声と、時折乱れ始めた口調。そしてツヴァイツァーの見据える眼差しの、底の見えない覚悟の強さに気圧された。
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