きみのこと、極甘にいじめたい。
あたしの顎に触れた手がくいっと上を向かせた。


「……っ、な」


目と鼻の先にある理太の綺麗な顔は、つまらなそうに眉根を寄せて。



次の瞬間、唇がにやりと歪んだ。



「決めた。ちょうど時間もあるし、俺が素直のこと……教育しなおしてあげる」



――ごくり、唾をのみ込む。



「だって俺、大好きだからね。素直のこと」



どっきーん、と高鳴る心臓。



「な、何言って……」



いや、落ち着けあたし。何ドキドキしてんの。



理太は勘違い女製造機でしょうが。


二度と騙されないし、本当に相変わらず最低な男……。



「いや、無い。ほんとあたしね、そういうこと言う人だけは生理的に無理なの!」



そういうトラウマを植え付けたのは、まぎれもなく理太だし。



「……はっきりしてんねー」



がっかりだよ、とあたしのノリの悪さでも嘆くような顔をする理太。



やっぱりちっとも本気じゃ無いらしい。




……この男だけは、恋愛自粛中じゃなかろうが、未来永劫(みらいえいごう)、恋愛対象外だ。



好きでもない人に好きと言えるようにまで成長してたなんて……こわすぎ。




「ま、いーよ。振られたってことは、これ以上は失うもの無いし、無敵ってことだから」



同じ目線までかがんだ彼に、どきりと鳴らされる愚かな心臓。



理太は、ふわりと微笑みを綻ばせて、



「……俺を強くしてくれてありがとね。素直ちゃん?」




にやりと、歪みゆく口角。



「……っ、」



圧倒的に強いオーラ……。



気圧されてしまい、何も言えないまま固まっていると、理太はリビングを出ていってしまった。



暇つぶしに、教育される、あたしって…。


理太のおもちゃにされるってこと……?



「だっ、断固拒否ー!」



響き渡る絶叫。


ドクドクと、心臓だけは高鳴り続けていた。



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