きみのこと、極甘にいじめたい。

両手をパンっと合わせて、勢いよく頭を下げた。



「理太、本当にごめんね! その代わり、なんでもお願い事とか、聞くから……!」



けど、何も言わない理太。


そっと顔を上げてみると。



「……女に二言は無いよね?」



さっきまでの溢れる哀愁なんてものはもう見あたらない。


……まさかあたしは、また()められたんじゃなかろうか。



その確信を促すような、理太の悪い微笑。



理太はあたしの頬をツーっと親指の腹で撫でていく……。



「んっ」


「……学校で、素直にあんまり喋んないように、頑張って我慢するから――」



その顔があたしに近づいてきて、肩にかかるあたしの髪を耳にかけた彼は、そこで囁いた。



「――誰もいないところでは、俺の好きにさせて」




ちゅ、と耳に触れる唇。




「……これが、俺からのお願い事ね?」




拒否権を与えない理太の声が鼓膜を震わせて、



ぞくっと背中が伸びあがる。



「ん……。っ、きゃーーー!!!」



パーンと、頬を叩いて逃げてしまった。



――ドクドクドクドク。



あ……の、勘違い女製造機……。



「……も、……ドキドキする……」



廊下を曲がりきったところで、へなへなとへたり込んだ余裕ないあたしを、



理太が愉快そうに肩をふるわせて見ていたことなんて、あたしは知る由もなかった。



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