きみのこと、極甘にいじめたい。
なんか理太がいるだけで心臓が速まってる……なにこれ。


ベッドの上で向かい合い、あたしを見据えるヘーゼルの瞳に鼓動は意味もなく急かされ続けている。



「俺の教育方針はね、暴力は絶対ダメ。でも……」



あたしの首筋を指さしたかと思えば、つんっと弾くように触れる指先。


そこから、じわりと温度が上がった気がして、思わず首を竦めた。



「時と場合と愛に応じては、痛いこと……全然する。この意味、ちゃんとわかる?」



そういわれて、悔しいほど即座に浮かぶのは、前につけられたキスマーク……。


顔を火照らせたあたしに、彼は悪戯っぽい微笑を浮かべて。



「わかんないの?」


「知らない……!」


「あー、そう。じゃあ復習しよっか?」



――先生が教えてあげる。


じゃないから!!



「するわけないでしょうがぁ!!」


「……ふ、ップ、素直ってかわいーなぁ」


肩をゆらして笑いながら、ベッドから立ち上がった理太。



「……行こ?」



理太が先生だとしたら、あたしは反抗的な不良生徒だ。



こちらに伸ばしてくるその手を、叩き落としてやろうと思ったんだけど。



「素直のお母さんに朝の挨拶、たまには一緒にしようよ?」



細まる優しい微笑。


「……」



手を叩き落とすどころか、掴んじゃったじゃん……。


……こういうところ。


理太のずるいところだと思う。


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