もふもふになっちゃった私ののんびり生活
 おばあさんが宿屋から戻って来たのは、出かけて行って約一時間が過ぎた頃だった。

 宿の血を吐いたという宿泊客は中年のがっちりとした体型の討伐ギルド員の男性で、結局木枯らし病だと判断された。
 そこからが大変だった。
 なんといっても最初に倒れたのががっちりとした男性だったので、咳が止まらないでいた女性や子供、お年寄り達やその家族が騒然となったのだ。

 おばあさんは宿の他の宿泊客で咳が出ている人を診断し、木枯らし病だと思われる人には薬を出して戻って来たのだが、おばあさんが戻って来た後に、店にたくさんの人が押し寄せたのだ。

「慌てるんじゃないよっ!今年は、早くから薬草を確保できたから、他の店にも渡してある。ちゃんと薬は用意してあるから、症状の重い人を優先だよ!軽い内に飲んでも効かないことがあるから、しっかりと症状を見極めて投薬するから、咳が出て高熱が出てたり、血を吐くような咳の出る人や家族にいる人だけ並びな!!」

 そうおばあさんが一括したところでその場の混乱は収まったが、今街で流行っているのが木枯らし病だということは一気に街に広がり、薬屋へ人が押し寄せた後は街から人が消えた。
 うつるのを警戒して外を出歩かなくなったのだ。

「いつもだったら木枯らし病が流行り出すと、それから薬草の調達が通達されるから、どうしたって始めは薬の数が不足するから、皆用心するんだよ。今年はルリィが予め大量に採って来てくれたから、これでも混乱は少ないもんだよ」

 おばあさんにそう言われて追加で三日間街に逗留しながら咳止めや解熱剤を調合していたが、そろそろ一度家へ戻って薬草採取に向かった方がいいかもしれない。

「ヴィクトルさん。明日、家に戻ろうと思うんですけど、また採取に付き合って貰ってもいいですか?」

 そう思ってヴィクトルさんに声を掛けてみると。

「ああ、勿論だ。昨日討伐ギルドで確認したら、薬草採取の依頼は出ているんだが、今はマギラ草を採れるギルド員が不在だそうでな。俺にも声を掛けられたから、丁度いいかもしれないな」

 ヴィクトルさんは最近では毎日、店が終わった後、毎日討伐ギルドへ行って薬草採取の依頼や納品状況の確認をしてくれていた。

「すいません、いつもありがとうございます」

 そうお礼を告げると、頭をポンポンっと撫でられた。そうして調合室へ戻ろうとすると。

「ルリィちゃんっ!!大変だよっ!」

 一昨日の再現のように、またアイリちゃんが叫びながら店へと飛び込んで来た。嫌な予感にさいなまれながら応えると。
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