もふもふになっちゃった私ののんびり生活

「ええっ!い、いいんですか?くすぐったくならないですか?」

 今までも乗せて貰うと、つい手が動いてしまっていたが、それは片手で背中だけの話だ。好きなだけ、と言われたら、全身もふもふしていい!ということに!!

 ふぉお!とさっきまで沈んでいたテンションが一気に上がる。

『俺は大きいからな。ルリィが触ってもごく一部だし、くすぐったい時は言うからその時は止めてくれ』
「は、はいっ!!じゃ、じゃあお腹はあれなので、背中に乗らせて貰いますね!!」

 それから伏せたヴィクトルさんの背中に上がり、いつも座る首の後ろに立って、ずっと気になっていた耳に手を伸ばした。
 顔を見た時に小さいな、と思ったが、頭が大きいので実際の大きさは私の頭から胸元くらいまであり、思わず抱き着いたのは仕方ないと思うのだ!!

 耳は私の耳とは違って厚めで重厚感があり、しっかりとした弾力を返してくれた。それなのに耳特有のコリコリとした感触と短い毛はビロードのようで、もふもふする手は止まる筈もなく。

『ル、ルリィ!ちょっ!』

 とかなんとかヴィクトルさんが言っていた気がしたが、それからは夢中で耳、頭、そして背中に寝ころんで全身でももふり倒した。胸元のセフィーの枝はブルブル震えていたし耳元にセフィーの声もしていたが、当然耳に入らなかった。

 背中の寝心地は高級絨毯を越えた!とだけ報告しておきます!



「それで明日はどうしたいんだ、ルリィ」
「家の周囲で採れる分だけ採っておきます。ゴゴの根は集まったし、あとは家の近くでマギラ草とローブル草は採れるので」
「まあ、ばあさんの言葉ではないが、俺もルリィが街の面倒事に巻き込まれる必要はないと思うぞ。まあ、街へ戻ったらマギラ草の採取依頼を受けるつもりだが」

 ヴィクトルさんはいつも私を自然と甘やかしてくれているよね。今だって落ち込んでいる私を身を差し出してまで慰めてくれて。それに私も甘えてしまっているんだけど……。

「じゃあ、一日だけ。明日だけ付き合って貰えますか?あと、討伐ギルドで薬草採取の集まり具合を確認しておいて貰ってもいいですか?」
「ああ。街へ戻ったら依頼を受ける時に確認しておこう。まあ、あんまり考えすぎないで、ルリィは好きにすればいい。薬があれば、確実に助かる命があるのも確かなんだからな」

 そう言ったヴィクトルさんの優しい笑顔を見て、この木枯らし病のことが落ち着いたら、しっかりとヴィクトルさんのことも考えよう、と改めて決意した。

「じゃあ、また明日、よろしくお願いします!」
「ああ、また明日」

 採ったゴゴの根を託し、明日の約束を交わし、家へと駆けだしたのだった。

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