もふもふになっちゃった私ののんびり生活
紙に書かれていたのは知らない文字なのに、何故か私の目には日本語として解読できた。
驚き過ぎてその紙に爪に引っ掛けながらひっくり返ると、コロンと転がった私の横にヒラリとその紙が落ちて来た。
『雨沢紗季さんへ
転生してしばらく経ちましたが、ゆっくりと療養できましたか?
あなたの希望ですが、半分はこの場を用意することで叶えましたが、あなたが愛でたいと言ったもふもふは、貴方自身で絆を結んで欲しいので、貴方をもふもふにしました。記憶をそのまま転生させるのにも、その方が支障が出ないでしょう』
ああ、やっぱり。なんとなく、そうだと思っていた。
人間に生まれ変わって赤ちゃんになっても、記憶を持ったままだと普通とは違う生まれをした両親に気を使っただろう。そうなるとのんびりと寝て起きて、という生活でも精神的に今ほど休まったとは思わない。
そして続きを読むと。
私はシルビィーという種族の魔獣で、私の世界だと狼に近い種族だそうだ。ただこの世界の狼のような種族はみな大型で三メートル以上の巨体なので、私が大きいイメージがなかったので、小型で狼と狐を足して二で割ったような外見をもつシルビィーにしたそうだ。
そして私の種族であるシルビィーは、魔獣の中でも上位の種族で人化も可能らしい。
この世界には、普通の動物、魔力と知性を持つ魔獣、そして魔力を持つが本能のみで他の生き物を襲う魔物がいるそうだ。
魔獣は知性があり、魔力を介して人と会話したり人化する種族もいることから、魔物とは区別されて人と共存しているようだ。
人は人種の他に、エルフ、ドワーフ族、妖精族、魔族などの様々な種族がいて、獣人は見た目はほぼ人の姿と変わらずに獣の耳と尻尾だけを持つ種族や、ほぼ獣の姿で二足歩行の種族もいるそうだ。
それは獣から人種へと進化した種族と、人から獣へと進化した種族とがいるからで、獣から人種へと変化した種族は、獣の姿と人の姿とどちらの姿もとることが可能らしく、そう考えると人化する魔獣とあんまり変わらないように思える。
それと同じように人種も巨人や小人もいるし、エルフやドワーフ族にも様々な種族がいるそうだ。そして混血の人もいるから寿命もバラバラだ。
もうここはなんでもありの世界なんだね。でもそう考えると気が楽かも。これだけ様々な種族がいるのなら、人の外見の違いはそれ程注目されない、ってことだろうし。よくある黒髪黒目が異端、とかそういうことはなさそうだ。まあ、私は人化したら恐らく灰色か銀の髪に蒼の瞳になるのだろうけどね。
そうして人化する方法もその紙には書いてあったが、とりあえずは頭がいっぱいになり、そこまでで一度読むのを止めたのだった。