もふもふになっちゃった私ののんびり生活
「キャンキャンッ!ワフゥ……キャンッ!!」

 なんだそりゃーっ!と咄嗟に叫んだ文句も、当然鳴き声にしかならず……。
 ひとしきりその場で吠えてみたけれど、当然のことながら神様の返答なんてある筈もなく。そのまま喚き疲れてパタリと寝落ちして目覚めた頃には仕方ない、と現状を受け入れた。

 こうして吠えていても、何も解決する訳じゃないし。ああー……社畜時代もそうだったな。何も分からなくてもとりあえず手を動かさないと、頼る人も助けてくれる人なんて誰もいなかったし。

 その疲労が積み重なっての過労死だ。とりあえずこうして記憶を持ったまま異世界に転生できたのだから、神に言った希望の通り、絶対にのんびり過ごすのだけは妥協なんてするもんか。

 クゥー……。

 さんざん叫んで騒いで寝落ちまでしたら、そりゃあお腹も減る。しかも、恐らく私はほんの生まれたばかりの子犬くらいの大きさだ。
 何故ならばすぐ近くの木の根さえも見上げる程に大きいし、身体の下の落ち葉でさえ自分の肉球の何倍もある。

 子犬って、何を食べたっけ?まあ、実際に私が子犬かどうかは分からないけど。鳴き声も尻尾の感じもイヌ科だし。
 というか、この感じだとまだ母親のお乳を飲んでいる頃合いだと思うんだけど……。あれ?私、転生したんだよね?

 転生というなら、親から生まれるのでは無かったのか。確かに読んでいた小説には、大人が子供に若返って転生とかあったけど。
 しかも、ここは森の中。そこに生まれたばかりの弱々しい子犬がぽつんと一匹。

 今更ながら、私って今、かなりヤバイ状況じゃない?

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