もふもふになっちゃった私ののんびり生活
門番さんに手を振りながら駆け込んだ街は、古いヨーロッパの街を思わせる街並みだった。
石造りの三階建て以上の建物や、木造の二階建ての建物が建ち並び、門から続く街の大通りは石畳に覆われ、馬に似た動物か魔獣に引かれた馬車が行き交っていた。
街を歩く人は色とりどりの髪に瞳、そして多種多様の特徴を持つ外見の人達で、思い描いていた異世界の街、そのものだ。
二足歩行のニメートルを越える狼や猫にしか見えない人が服を着て歩いているし、そうかと思うと私よりも小さい小人などもいた。
おおっ!あっ、あっちのあの人は白目がないし耳にヒレがある!想像していたよりも色んな人がいる!!
思わず立ち止まって見とれていたら、ドンッと誰かにぶつかったのか衝撃に倒れそうになってしまった。
「うをっ!す、すまん、見えなかった。おじょうちゃん、大丈夫か?こんな処で立ち止まっていたら危ないぞ?」
「あっ、ごめんなさい、ちょっとぼうっとしてました」
「んん?おじょうちゃんは一人か?小さな子供が一人では……」
「あ、あのっ!調味料を売っている店はどこですか?買い物をして、帰らないと行けないんです!」
なんとかバランスをとり、転ばなかったことにホッとしていると、ぶつかった相手のがっちしりとした熊のようなおじさんに謝られながら頭を大きな手で撫でられた。
「おう、調味料の店か?……大通り沿いの店より一本裏の通りの店の方が安いな。……どれ」
頭を撫でていた大きな手がひょいと伸ばされ、気づくと肩車されていた。
「きゃあっ!」
「小さな身体ではこの通りを横切るのは危ないからな。近くの店に連れて行ってやるから、そこで大人しくしていてくれ」
あっけにとられている間にすでに人の波に逆らって大通りを横断していた。
……悪い人ではないようだし、いざとなればこのまま空へ逃げられるかからいいのかな?
風を蹴って空を駆ければ、いつでも逃げられる。そう判断して落ち着いてみると、両手をついている男性の頭に丸いもふもふの耳があることに気づいた。
うわあ!これは……熊の耳?熊の獣人さんなのかな?ううう、小さくてももふもふ……。触ったら……ダメ、だよね?痴女になっちゃうよね?
うずうずする手を頑張って耐え、辺りを見回すと丁度門から続く大通りの一つ目の角を曲がるところだった。
高いからよく見える……!あっ、あの人嘴と背中に羽があるっ!鳥の獣人もいるんだ!それにあの頬に鱗がある人は、蛇の獣人さんなのかな?それとも竜なのかな?
思わず興奮して肩車をしてくれている男性の頭をぎゅっと握って目を輝かせてキョロキョロと辺りを見回してしまった。