もふもふになっちゃった私ののんびり生活

 大銅貨1枚を払いながらついでに女将さんに薬草を売れる店はないかと聞いてみると。

「そうだね……。子供でも足元を見ないで買ってくれる店がいいんだろう?」
「はい!知っていたらお願いします!」

 着替えて森を出る前に、薬をいきなり売るのは難しいんじゃないか、と気づき歩きながら少しだけ採って来たのだ。

「おじょうちゃんはいい子そうだから、ちょっと気難しい婆だけど大丈夫かね。どれ、ついておいで。すぐ近くだから案内してあげるよ」
「どうもありがとうございます!!」

 店を出て手招きしてくれた女将さんに尻尾を振りながらついていく。

「いいかい、さっきのライルは悪いヤツじゃないから良かったが、街には子供を攫って売っぱらおう、だなんて奴らもいるから誰でもついて行ったらダメだよ?」
「はい!ライルさんはイヤな匂いはしなかったので。でも、気をつけます!」

 この街へ来るまでたくさんの人とすれ違ったりしたが、なんとなく近寄ってはいけない人などは匂いで分かることに気づいた。
 鼻につく匂いのする人は決まって嫌な目つきでこちらを見ていたから、門でも並びながらもそういう人の視界に入らないようにしていたのだ。
 そういうイヤな匂いの人が近づいて来たら、街の中でも一目散に逃げようと思っている。
 その点、さっき女将さんに散らされていた人たちからはイヤな匂いはしなかったから、見られていることに気が付かなかったのだ。

「そうかい。匂いで気が付くなら安心したよ。ホラ、この店だ。大通りから二本目の通りの角だから、分かりやすいだろう?」

 着いたのは、女将さんの店から少し戻り、大通りからの通りを更に一本奥へ入った場所の角の店だった。この通りは更に細くてごみごみしている感じだが、角にあるこの店は小さいながらもしっかりとした造りだった。
 開いている扉から中を覗いてみると、吊るされた様々な薬草の束が見える。

「ありがとうございます!とっても助かりました!」
「いいんだよ。ほら、入った入った。婆さん、小さな客だよ!」

 女将さんは店へと私の背を押すと、中へ声を掛けて引き返して行った。
 その姿を見送り、店の中へと入って行くと、すぐに大きなカウンターがあり、その後ろの棚に様々な薬が並べられている。
 そしてカウンターには、白髪の年老いた老婆がいた。

「ほおう、お前さんが客かい?何が欲しい?」
「あの、薬草を買い取って欲しいんですけど、大丈夫ですか?」

 しわくちゃな顔からぎょろりと目が動いて私の姿を捉えたのを見て、少しだけビクッとしてしまったがじっとその目を見つめながら聞く。

「ほおう。儂の目を逸らさんとは。どれ、見せてごらん」
「は、はい。これ、なんですけど……」

 カバンから採ったばかりの傷薬に使う薬草と、熱さましに使う薬草を二十本ずつ取り出した。

 こんなことなら、家から薬じゃなくて薬草を持ってくれば良かったかな。

 次回からは薬草を持って来よう。そう思いつつ背伸びしてカウンターへ薬草を乗せた。
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