【完】イミテーション・シンデレラ

「まあ、昴に飽きるまでならそれもいいかもね。」

クズにはクズ返し。
ツンと顔を背けてそう言ったら、ふわりと後ろから暖かい温もりが体を伝う。
また胸がきゅんっとしてしまう。

「本当に可愛いんだから、岬は」

甘い言葉を投げかけられても、もう喜べなかった。

本当はセフレなんか嫌…。 昴と恋人同士になりたいの。 けれど言う言葉はいつも正反対の事ばかり。

体だけの関係なんて、本当は嫌だったの。 芸能人同士の恋愛なんてもうこりごりだと思ってたけど、昴の彼女になりたいの。

だってセフレだったら、互いに彼女彼氏が出来たらそこで終わってしまう関係じゃない。
恋愛を通り越して、体だけの関係でいなくてはいけない。

言いたいのに、どうしても言えない。


そっと後ろを振り返ると、ちゅっと音を立てて小鳥のようなキスを昴は私にした。 そしてくしゃくしゃの無邪気な笑顔を向けるのだ。

胸がズキリと今日1番の痛みを立てる。

好きになって傷つくくらいなら、セフレでも良い。 多くは望みたくない。 ぎゅっと昴の胸にしがみついて、気づかれないように小さく泣いた。

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