【完】イミテーション・シンデレラ

確かに俺は幼い頃から周りから騒がれるほど容姿も良く、背も高かった。 けれど、芸能界という世界は俺の小さな自尊心をぶっ壊すには充分な世界だった。

この業界は普通で居る事の方がむしろ異質なのだ。 それぞれの自分の武器を持ち、輝きを放つ才能の塊の集団。 その中でも、同じ事務所の同い年の真央は特別な輝きを放っていた。

出会った頃から知っていた。 俺は、真央には敵わない。 我儘で自分勝手で傲慢。けれど何故か気になってしまう存在。誰からも愛される才能を持つ。 こういう才能は後天的な物ではなく、先天的な生まれ持ったものだと思う。

そして生憎俺はそんな才能持ち合わせてなかった。  


売れない時代は数年続いた。 粉々に砕かれたプライド。 それでもこの仕事を続けて来た理由は

演技をしていくうちに、俳優という仕事がとても好きだと気が付いたからだ。 努力をしていく事は、凡人の自分にでも出来る。

そして数年後俳優としてブレイクをした俺の周囲は変わって行った。 そこは信頼と裏切りばかりの世界。 叩きつけられた現実。 実力のないものは、堕ちて行くだけ。 使い物にならないものは、使い捨てられる世界。

輝かしいスポットライトの下で、どれだけの人の涙が零れ落ちていた事だろう。 沢山の涙の上にスターは成り立っていく者だ。 そして涙の上に立つ者のプレッシャーは並大抵のものではない。
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