【完】イミテーション・シンデレラ
「ま、まさか!彼氏なんかいないもん!!!
さ、SARARA時代のメンバーと…
寒くなったから鍋パでもしようって話で」
しどろもどろ説明をするけれど、こんなに焦っていたら変に思われる。
大体SARARAで仲の良いメンバーもろくにいないくせに。
雑誌やテレビで仲良さそうに振舞っていたって、それはファンサービスの一環ってのはよくある話だ。
テレビの前では演じているけれど、芸能界で出来た友達なんて一握り。 頻繁に連絡を取るのなんて、私より先に卒業をした初期メンバーでリーダーを務めていた有菜と一方的に懐いてくる梨々花位だ。
「そうなの、有菜ちゃんと?」
「そそ、有菜。」
「有菜ちゃん良い子よね~。明日は久しぶりのオフなんだから楽しんじゃって。
最近は仕事詰め込みすぎちゃったしね。
新宿でいいのね」
「ええ、大丈夫よ。 笹田さんありがとうね」
拾い上げた雑誌をバックの中にしまい、ふっと一息。
互いのスケジュールを照らし合わせて、今日の夜に昴と会う事になった。
新宿は、昴のマンションがある街だ。 この日が来るまでずっとモヤモヤした気持ちでいっぱいだった。
梨々花の協力をするなんて言っておいて、こっそりと昴と会う事。 なんて性悪女だ。それでも昴に会いたかった。
でも梨々花の気持ちを想うと、胸が痛くなるばかり。