没落人生から脱出します!
「俺はしばらく下がっています。おひとりになるときにまたお呼びください」
「待ってよ、リアン」

 エリシュカは必死に目で訴えたが、使用人であるリアンがこれ以上出しゃばることはできない。
 背中を向け、歩き出したリアンをエリシュカが追いかけとしたが、それを双子が阻んだ。

「姉様、こっちです」
「放してマクシム、私は……」
「こっちだよ、姉様」

 ラドミールが強くエリシュカを引っ張った。するとぐらりと体が傾げて、バランスを崩す。
 よろけただけならよかった。けれどここは池のほとりで、周囲はやや湿っていた。エリシュカは足を滑らせ、池のほとりの石に強く頭を打ち付けた。強い衝撃と共に意識を失い、池へと落ちてしまう。
 もちろん、庭園にある池は、そんなに深いものではない。けれど、小さなエリシュカが横向きに倒れれば、溺れるくらいの深さはある。

 バシャーンという激しい水音、突然泣き出したマクシムとラドミールの声。
 すでに屋敷の入り口まで戻っていたリアンは、音を聞いて、慌てて池の方へと戻った。
 その場には、青い顔で口もとを押さえたキンスキー夫人と、泣き叫ぶだけのマクシムとラドミールがいた。エリシュカの足だけが、水面より上に見えていて、リアンはすぐに彼女が落ちたのだと判断する。
 リアンは慌てて池に入り、エリシュカの顔を水面より上へと引っ張り出す。
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