没落人生から脱出します!
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 今日は、リアンとエリシュカの結婚式だ。
 伯爵となったのだから、本来ならば貴族として豪華な結婚式をしなければならないのかもしれないが、キンスキー領の再出発として、質素倹約をモットーに領土内にある教会で、こじんまりと行うことにしたのだ。
 もちろん新伯爵と夫のリアンのお披露目は必要なので、近隣の貴族には、結婚後、正式に招待し晩餐会を開く予定である。

「本当に素敵よ。エリシュカ」

 リーディエとヴィクトルも、『魔女の箒』を臨時休業し見に来てくれた。

「リアンも、意外と様になってるじゃん」
「意外とって言うな」

 普段、軽装で、しかも着崩していることの方が多いので、会う人みんなにからかわれている。

「王子様みたいでしょう?」
「ぶはっ」

 エリシュカは素直に感想を述べたが、ヴィクトルがひーひー笑い出した。

「にあわねー。リアンが王子様……」
「やめなさいよ、ヴィクトルさん」

 リーディエに小突かれても、ヴィクトルは笑うのをやめない。
 リアンは仏頂面のまま、ヴィクトルを睨んでいる。

「おかしくないですよ。本当に。リアンは昔から、私の王子様なんです」
「……エリシュカはよく照れずにそんなこと言えるな」
「本当のことですもん!」

 軽やかに微笑み、リアンの腕にしがみつく。

「さ、そろそろ始まるよ。ちゃっちゃっと誓って、屋敷でいいもの食べようよ」
「もうっ、ブレイク、夢がないわね。……エリシュカちゃん。今日をしっかり楽しみましょうね。人生で最高の日だもの」
「はい。叔母様」

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