没落人生から脱出します!
魔力の測定は学校でおこなった。その時は、特段多いという気はしなかったので不思議に思っていると、リアンが補足してくれた。
「血筋が関係しているのかもしれないが、一般的に、魔力は貴族が多く平民が少ないんだ。その割に、貴族はあまり魔力を使わないけどな。大抵の貴族の館では魔力もちの平民は高給で使われているだろ?」
キンスキー伯爵家の魔道具はランプと食料保存用の冷蔵庫くらいしかなかったが、高給の魔力供給人がいた。
「魔力は無尽蔵にあるわけじゃないし、魔力込みの魔石は高価だ。俺はなるべく人に負担をかけないものを作りたいんだ」
どこか寂しそうにリアンが笑う。
(どうして、そんな顔をするんだろう)
胸が、きゅっと疼いて、心臓が落ち着かない。
記憶が戻れば、もっとリアンのことがわかるだろうか。だとしたら思い出したい。どうやったら、失った記憶を取り戻すことができるだろう。
「……エリシュカ」
「は、はいっ」
振り向かれて、エリシュカはびくりと体を震わす。リアンは一度きょとんとした後、そっぽを向いてつぶやいた。
「もう、寝ろ。風邪ひくなよ」
「は、……はい」
変なドキドキが止まらなくて、エリシュカは慌てて立ち上がった。
いつもなら、魔道具のアイデアを考えることで夢中になっているのに、今日はリアンの横顔が頭から離れず、ベッドに横になっても、なかなか寝付けなかった。