かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
チラッとだけ私に向けられた川田さんの眼差しに邪魔だと言われている気がした。
「……すみません」
上から下まで動いた視線に、ああ値踏みされたんだなと気付きおもしろくない気分になる。
あきらかな敵視は、桐島さんへの想いを強く物語っていた。
聞いた話の中だけでも桐島さんに好意があるようだったし、きっと〝彼女〟の私には風当たりが強いだろうと予想はしていたけれど……それにしたってあからさますぎる。
私が黒田相手にとる態度とはまた少し違う失礼な態度は、意識的なものなのか、はたまた無意識なのか。
これからの数時間が既に嫌になりながら目的のお店までを歩いた。
川田さんが予約してくれたのは、モダンなダイニングバーだった。
和をイメージしているようで、入り口の引き戸には抹茶色の暖簾がかかっていて、中の通路には砂利が敷き詰められている。
その上に丸い形のタイルが歩幅感覚に置いてあり、その両サイドに個室が並んでいる造りだった。
途中にはカウンター席もオープン席もあったので、川田さんがわざわざ個室を予約したということになる。
……やっぱり、桐島さんに好意を伝えたかったのかもしれない。
ドキドキと緊張しながらお店を予約して、あの場所で今か今かと桐島さんを待っていたのだと考えると、私を邪険に扱うのも仕方がないように思えた。
掘りごたつタイプの和室には、薄い板でできた座椅子と市松柄のクッションがそれぞれ四つ置かれていた。
桐島さんに促されるまま隣に座ると、川田さんが向かいの席に座る。