かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました



「え、酒井部長に送ってもらったの? あの、融資管理部の?」

珍しく外にランチに出た木曜日の昼休み。
昨日の出来事を簡単に説明すると、紗江子は桐島さんではなく酒井部長の名前に食いついた。

表情に嫌悪感を滲ませる様子を見て不思議に思い「そうだけど……なに?」と返した私に、紗江子がその理由を教えてくれる。

「澪は知らないかもしれないけど、女好きで有名な部長だよ。彼氏持ちの子ばっかりつまみ食いしてるって話。実際、酒井部長に誘われたって子もいるみたいだし、噂じゃなくて事実なんだと思うよ。しかもセクハラ発言も多いとかで人事部から目をつけられてるって」
「……なんで彼氏持ちばかり狙うんだろう」

望みが薄い相手ばかりを選ぶ意味がわからずにそう漏らすと、紗江子が〝わかっていない〟とばかりに首を振った。

「つまり、遊びでしか付き合いたくないんでしょ。彼氏がいる子なら、自分に本気にはならないって踏んでるんだよ」
「恋愛はしたくないってこと?」
「そうじゃない? 飲み会かなんかで言ってたらしいけど、〝人の物〟ってオプションがつくと狙いたくなるんだって。まぁ、男女関係なくたまにいるけどね。そういう恋愛観最低なやつ」

紗江子の話を聞きながら、オムライスののったスプーンを口に運ぶ。
店内は壁もテーブルも白で統一されていてボサノバ調のBGMが流れていた。


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