かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


例えば、小学校の頃。クラスの男子が〝あそこの駄菓子屋は万引きできる〟なんて話していたら〝そういうのはよくない〟と注意した。

例えば、中学一年の頃。友達の水着を隠した男子生徒を、泣いている友達の代わりに非難した。

今考えてみても、間違っていたとは思わない。でも……出しゃばっていたと言われればそうだったのだと思う。

「中学の頃、登校中の電車内で女性が痴漢に遭ってることに気付いて、犯人の腕を掴んだんです。犯人は男子高生で、次の駅で駅員さんに連れていかれました。その時、被害に遭ってた女性に言われたんです」

忘れもしない。
濁った空からはいつ雪が降りだしてもおかしくないほど冷え込んだ冬の朝だった。

ベージュ色のコートに身を包んだ女性は、私を見て眉間にシワを寄せた。

『どういうつもり?! あんな大勢の前で……っ』

キンとしたヒステリックな声に肩がすくんだ。
私が怒鳴られているのだと気付くまでには少し時間が必要だった。それくらいこの状況を想像していなかった。

眉を吊り上げ、歯を食いしばっている女性を前に、なんとか『困っているのかと思って……』と言うと、すぐに尖った声が返ってきた。


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