東京ヴァルハラ異聞録
「皆様、間もなくこの世界の崩壊が始まります。ここにおられる皆様は、最後に現世に帰る事になりますが、一つだけ、今更ですが言っておかねばならない事があります。ここは魂の世界。無闇に他人に話される事がないよう、ヴァルハラの記憶は消去されしまいますが、ご了承ください」


本当に……今更言ってくれるよ。


「沙羅、記憶が消えてしまうんだって」


「うん……消えちゃうんだね」


そう言い、どちらからともなく、俺達は手を繋いで。


部屋の外側の窓へと歩いた。


眼下には黒い世界が広がっていて、ヴァルハラの街が見えるはずもない。


「本当にありがとう昴くん。昴くんがいなかったら、ここまで来られなかったね。本当に願いが叶うなんて……夢でも見てるのかな」


「こうなるって、運命で決まっていたみたいだけどな。俺が強くなるのも、高山真治に勝つのもさ全部、運命って言葉で決められていたんだ」


そう考えると少し悲しい気もする。


もしかすると、俺じゃなくても良かったのかもしれない。


他の誰かが、この日本刀を手にしたら、俺以外の人がこの運命に乗っていたのかもしれないのだから。


でも……たとえ運命だとしても、良かったと思える事はたくさんあった。
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