東京ヴァルハラ異聞録
「運命……か。じゃあ、俺が沙羅と出会う事も運命だったのかな」


「昴くんはどう思う?沙羅はそう信じたいけど」


「そうだな……沙羅出会って、好きになって、こうなる事も運命だとしたら、それは感謝したいと思うよな」


見つめ合い、ゆっくりと近付くお互いの顔。


求めるように唇を重ね、沙羅の身体を抱き寄せた。


この時間が永遠に続けば良いのにと、残された時間を惜しむように。


「……沙羅、元の世界に帰っても、またどこかで会おうな」


「うん、絶対に会おうね。その時は、昴くんに見付けてほしい」


「絶対に……見付けるから」


そう言って、もう一度唇を重ねた時、俺は一度感じた事のある浮遊感に包まれた。


身体が溶けて、天に昇るような感じと言うか……。


きっと、元の世界に帰るんだなと感じながら、この世界から切り離される感覚に包まれた。






昴くん……私、元の世界に帰れるんだね。





どこかで聞いた事のある声が聞こえた。


「ええ、帰りましょう。皆で」


この声は……真由さん。


あの日、秋葉原駅のトイレで、真由さんを見なかったら始まらなかったかもしれない物語。


それが、やっと終わりを告げたんだ。
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