東京ヴァルハラ異聞録
さっきのような全方向からの攻撃ではない。


超高速の、短剣を俺に突き付ける単純な攻撃。


だけどそれも、目にも留まらぬ速度なら、一撃必殺の攻撃へと変わる。


右手の短剣を、鞘で下から弾く。


だが、拓真は左手の短剣を俺の心臓目掛けて突き付けた。


今度は日本刀で……ダメだ、間に合わない!


短剣の刃が心臓に向かう。


慌てて身体を捻り、その勢いを利用して鞘で拓真を押す。


しかし、刃は俺の胸を斬り裂き、血しぶきが舞ったのだ。


よろめき、後退する俺に、拓真がジリジリと迫る。


そんな時だった。


「す、昴!」


公園の入り口から、俺を呼ぶ声が聞こえて。


そちらを見てみるとそこには……舞桜の姿が。


「……なんだ?お前のガールフレンドか?」


フンッと鼻を鳴らし、いやらしい笑みを俺に向けた。


「舞桜……拓真、あの子達を守ってくれ。俺じゃあ守れないんだ」


胸から血が溢れ出ている。


心臓には達していないと思うけど、俺が負けるのは……感覚でわかったから。


「冗談だろ?俺がお前の頼みを聞くと思ってるのかよ」


「お前しか……頼めるやつがいないんだよ。あの子達はつらい目に遭って来たんだ……頼む。守ってやってくれ」


日本刀を手から放し、拓真の肩を掴んだ。


「くっ!敵の頼みなんて聞けるかよ!!」


そんな俺の心臓に、拓真の短剣が突き刺さった。


悟さん達にも会えず、舞桜を守る事も出来ない。


だけど、拓真に舞桜を託せた。


きっと……守ってくれると信じて、俺の身体は光へと変わった。
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