東京ヴァルハラ異聞録
東京・秋葉原


高校の友達、新堂拓真(シンドウ タクマ)と池田麻衣(イケダ マイ)に連れられて、アイドルのライブと言うやつに行った。


俺が元気がないからという事で、騒いでストレスを発散出来ればと考えたらしい。


「どうだったよ昴! やっぱ友達と騒ぐライブは最高だよな!」


ライブが終わり、駅の近くにあるメイドカフェ風のレストランに移動して、ドリンクを飲みながら三人で話をしていた。


「拓真、コール間違ってたよ。『仮面の檻』の落ちサビ前。あそこ、『天使の歌姫』だからね。あんた『ゆるふわ美少女』って言ってたでしょ?」


「はは……全然わかんねぇや」


拓真も麻衣もいわゆるドルヲタで、こういう話になると俺は全く付いていけない。


そもそも、今日初めてアイドル現場に行ったのに、わかるはずがないよな。


建物の二階にあるレストラン。


駅から出て来た人や、駅に向かう人が眼下に見える。


二人の話を聞きながら、ぼんやりと外を眺めていた時だった。


人混みの中に、おかしな物が見えたのは。


「え? なんだ……あれ」


向かいのゲームセンターのガラス。


そこに、ナイフを構えた男と、バールを手にした男が映っていたのだ。
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