東京ヴァルハラ異聞録
篠田さんが沙羅に渡したのは、黒いローブ……いや、ポンチョか?


それでもフードはあるし、姿を隠すには充分な物だった。


「ありがとう、タケさん」


沙羅が満面の笑みを向けるけど、篠田さんはそれを無視するように嵐丸さんの隣に座った。


「今の話、『キッドナッパー(人攫い)』の延吉だろ?『魂の鎖』で敵を持ち駒にする厄介な野郎だ」


「え、ええ。もしも悟が延吉に攫われていたとしたら、こちらの軍にもかなりの被害が出る事になりますよ」


西軍のトップ達の話に、俺と梨奈さんはなんだか場違いな気がして、肩身が狭いな。


「あいつは、敵軍の人間を持ち駒にしたら、自軍の人間を闇討ちさせて強化させやがる。あいつにとっては、自軍は味方じゃねえ。駒を強化させる為の餌だ」


そう聞くと恐ろしい。


悟さんがその延吉に捕まったとなると……操られて、俺達と戦う可能性があるって事だから。


「あー、タケさん。そんな時に言いにくいんですけど、まーさんが復活するまで、久慈を防衛に回して欲しいんですが。良いですか?」


「ああ、好きにしろよ。人が足りねぇのに侵攻しても仕方ねぇだろ。でもまあ……悟の事も気にはなるからな」


そう言って篠田さんは、チラリを俺を見た。
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