東京ヴァルハラ異聞録
「久慈さんは今の状態をどう思ってるんだろうな。最近まで一緒に戦っていた仲間が、勢力を分けていがみ合ってるんだ。良くは思っていないだろ」


その言葉に、愛美もよく分からないという表情を浮かべて首を横に振る。


「こんな状態を良しと思う人はいないでしょう。ですが、久慈さんは動きません。あの日以来、あのカラオケ店から出た姿を見た事がありませんから」


あの日……それはきっと、篠田さんを殺した日だろう。


久慈は、どんな気持ちで篠田さんの命を奪ったのか。


時間が経って、俺も冷静に考えられるようになった。


「一度、久慈に会いに行きましょう。久慈の考えを……あの時、何があって篠田さんを殺したのかを聞きたいです」


俺の発言に、皆小さく唸る。


「そんな状態でまともに話を聞いてくれるかどうか。行っても問答無用で戦闘になるんじゃないのか?昴が言ってたよな?手も足も出なかったって」


悟さんと愛美には、ポーンを狩っている時に話をした。


あの時は確かに全く歯が立たなかったけど、今なら少しは食い下がれるはず。


千桜さん見立てで、久慈と同等の力を持つ三宅を倒せたんだから、その可能性はあるよな。
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