東京ヴァルハラ異聞録
「あら?あんたが守ってくれるんでしょ?北軍最強の男が守ってくれるなら、心配する事なんて何もないじゃない?」


そう言われた秋本は、あからさまに不機嫌そうな表情を浮かべて。


「チッ……調子に乗るんじゃねぇよ」


そう呟いて、俺達に背を向けた。


「ではそろそろ行くか。昴少年が私の力を頼らないと言うなら、東軍に入るまでは共に行ってやるが、そこからは好きにしろ。いいな?」


俺と一緒に行くのは沙羅と美姫。


沙羅はともかく、美姫は扱いが難しい。


力の使い方もだけど、本当に扱い方も。


「わかりました。そこまではお願いします。恵梨香さんは……これからどうするんですか?」


「私か?私は次は南軍にでも行こうかと思う。仲間集めはまだ途中なのだからな」


バベルの塔に向かうには、まだまだ人が足りていないという事だ。


東軍は恵梨香さんがいた軍だから、仲間は多いだろう。


俺がわざわざ仲間を集めなくても、バベルの塔を目指す為に強くなろうとしている人達は多いだろうな。


黒井と名鳥……あの二人のように。


「わかりました。じゃあ、行きましょう」


沙羅と美姫を見て、俺は口を開いた。


ここから、本当の意味で俺の力が試される事になるのだと思いながら。
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