東京ヴァルハラ異聞録
「久慈さん!お疲れ様です!」


「おお、悟じゃないか。て、事は……この少年が結城昴か」


細身の身体、そして久慈と呼ばれた男を囲むようにしている、いかにも強そうな男達。


「そうです、こいつが昴。こちらが楠本梨奈さんと、長谷川美佳さんです。タケさんに言われて侵攻に参加したいんですけど……美佳さんを久慈さんの部隊で預かってもらえませんか?俺だと守り切れる自信がなくて」


「楠本……タケさんから聞いてるよ。まあ、一人預かるくらい良いけどさ。またタケさんに無茶言われたんじゃないの?お前が侵攻する時はいつも無茶するからな」


久慈さんにまで知れ渡っているのか、悟さんの無茶っぷりは。


いや、無茶をしてるって俺は知らないけど、美佳さんが心配した通りじゃないか。


「まあ……侵攻なんて無茶の連続でしょ?俺だけじゃないですから」


苦笑いを浮かべて久慈さんにそう言った悟さん。


「初めまして、久慈明友(クジ アキトモ)です。侵攻部隊の隊長をやっています。どうぞよろしく」


明らかに年下の俺にも、丁寧に挨拶してくれる久慈さんに恐縮しつつ、俺も頭を下げた。


「なんか感じのいい人だね。それに隊長さんだって。黒部さんより頼りになりそう」


美佳さんが嬉しそうにそう呟くと、久慈さんはそれが聞こえたのか満面の笑みを浮かべた。
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