東京ヴァルハラ異聞録
久慈さんが見た先には、確かに秋本と神凪の姿。


「向こうからも来ます。恵梨香さんと……朝倉か」


どうやら、目の良い人がそれぞれの軍にいるようだ。


俺達がどこにいるか、離れていてもわかるんだな。


「結城!北軍の準備は出来た。約3万の兵隊達だ。戦えるやつらは全員待機している」


「まったく、いきなり集めろとか無茶言ってくれるよね。でもまあ、こんな時が来るってわかってたけどさ。私とこいつの夢……あんた達の夢に便乗させてもらうよ」


秋本の胸をトンッと叩いて、神凪がニッコリと微笑んだ。


「それは違うな神凪。これは夢ではない。元の世界に帰る為の道に過ぎない。ヴァルハラで腕を磨いた我々が、ラグナロクで戦う……フッ。まるで神話の世界だな」


秋本と神凪に遅れる事数秒。


俺達の所にやって来た恵梨香さんが、フルフェイスを取ってそう言った。


「ごめんなさい。南軍で戦える人はそれほど多くなくて……想像していたよりは集まったんだけど、それでも少ないわ」


「それは仕方ないだろう。南軍は半壊状態だ。それでも戦おうという意思を持っているだけでも大したものだ。さすがは西軍を落とそうとしただけはある」
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