溺愛フレグランス


「大丈夫? あ、ヤバイ、血が出てる」

そうだと思った。
だって、このヒリヒリする痛みは今まで体験した事がない。
その前に、視界が狭すぎて歩く事ができなかった。
私はヒリヒリ痛む左目を手で押さえ、友和さんにもたれたまま車へ戻った。必死に冷静を装っているけれど、目の前の風景がグルグル回っている。
車に戻ると、友和さんがティッシュで私の痛む目をそっと拭いてくれた。
そして、助手席のサンバイザーのミラーで私の顔を映しながらこう言った。

「左目の瞼のところがパクッて切れてる。
病院に行った方がいいかもしれないな」

私は何度もティッシュで傷を拭いて、痛む左目をそっと開けてみた。
目を開けると瞼の傷が隠れてしまう。
でも、目の傷より目の腫れの方が酷かった。
私は放心状態でただ鏡を見つめるだけ。
そんな中、友和さんはスマホで当番の病院を探している。
私はもう一人で帰る気力を失くしていた。というより、あまりの衝撃に何に怒って車を出て行ったのか忘れてしまっている。

< 100 / 234 >

この作品をシェア

pagetop