翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?

「美緒の方は?バイト楽しい?」

私はオフィスちぇりこでのことを思い浮かべた。そこでの全てを翔ちゃんに熱く伝えたかったけれど、うっかり開きかけた口を、慌ててぎゅっと結んだ。
そしてただ一言。

「すっごく楽しい!」

とだけ言った。
めちゃめちゃ消化不良なんだけど、仕方ない。

「ならいいけどさ、告られたりするなよ?」

「何言ってんの。ないない、そんなのありえない」

人生でモテたことなんか一度たりともないのに。

しかもオフィスちぇりこの男子メンバーが、子供っぽい私を相手にするわけがない。

いや待って?
今のってもしかして、束縛なんじゃ。
だとしたら、今日が私の束縛記念日……。

「俺は彼女いるんですか、って聞かれた」

「えーっ、さっそく?」

感無量でうっとりした余韻を味わっていたのに束の間だった。覚悟はしてたけど、相手の子のアクションが早すぎて。
< 257 / 347 >

この作品をシェア

pagetop