会長。私と恋のゲームをしてください。
「お、おかえりなさい」



緊張して声が裏返ってしまった。

“好き”と自覚してから、なんとなく会長と目を合わせられない。

会長と出掛けたい、と思うのに、変に意識してしまう。


“明日、一緒に出掛けませんか?”


言いたい言葉は沢山ある。

だけど、言葉に詰まって何も出てこないんだ。

喉までこみ上げているものが、引っかかって、言葉にすることを諦めてしまう。


あーっ。

もう!

意気地なし!


自分の弱さをハンバーグに打ちつけていると。



「ふっ、」

「……」

「ふははっ、」



笑い声が聞こえた。

それは間違いなく会長の笑い声で。

なにか、面白いことがあったのだろうか。

急にツボにはまるようなこと、あった?

というか、私に向ける会長の視線が、珍獣に目を向ける視線になっているんですけど。


……珍獣、というものを私は見たことないけれど。


ぽかん、としている私に、会長は声を上げて笑いながら近づいてくる。


なに、なになにっ?


詰められていく距離。
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