会長。私と恋のゲームをしてください。
「違うのか?」



違わないです。

会長と出掛けたいと思っています。


だけど、それは可愛い女の子が言うセリフであって。

私みたいな地味子が言える立場じゃない。


そう思うと、自分の見た目に悲しくなってきた。


何も言わない私に、会長は呆れ顔。


そうだよね。

そうなるよね。


言葉に出来ない自分が悔しい。

ハンバーグを持っている手を見つめる。


なんで私って、こんなに臆病なんだろう……。



「北澤」



会長に名前を呼ばれる。

その声は変わらず優しいけど、どこか怒っているような感じで。


苛立ち……?

いや、拗ねているような声にも聞こえる。



「はい」



私はハンバーグから、会長に視線を戻す。



「やっと、こっち見た」



会長はきれいに微笑んでいた。


ふわっと笑う。


その言葉がぴったりだった。
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