会長。私と恋のゲームをしてください。
誰。

とは、失礼すぎません?


教室のドアの近くの席の男の子に言われた言葉。



「北澤ですけど」



名前を口にすると、教室中から悲鳴に近い声が上がった。

驚く私。

だけど、驚いているのは私だけじゃないようだ。


不思議に思っていると、クラスの前の席の女の子が立ち上がった。



「北澤さん!?」

「かわいくなってる!」

「え、かわいすぎねぇ!?」



先生が『うるさいぞ』と言っているのに、静かにならない教室。

“かわいい”と口にするクラスメイトに私は首を傾げるばかりだ。


別に何もしていないんだけどな。



「イメチェンしたの!?」



クラスメイトの言葉で初めて気がついた。


そうだ。

いつも三つ編みにしている髪の毛を結んでいない。

メガネもしていない。


それだけなのに、なんでこんなに騒ぐんだろう。

イメチェンというより、私にしたら手抜きなんだけどな。


教室のドアの前で戸惑う私を救ってくれたのは、担任の先生の怒鳴り声だった。
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