『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
 でも男の子ばかりなので前のほうは全然見えなくて。
「ゾンビはどこ?」
 飛び跳ねながらあたりを観察していたら、肩をたたかれた。
 タッチャンが親指をたてて、イエーイって顔で笑ってる。
(あ、いや、別に…)
 ノッテるわけじゃ、ないんですけどもね。
 あはははは。
 渡してくれた紙コップの飲み物をありがたく受け取って、ちょぴっと口をつけてみる。
「うわ、おいしい」
 飲んだことのない風味のオレンジジュース。
 タッチャンが手で飲め飲めって言ってくれるから、ありがたくいただいた。
 立ち飲みなんてはしたない…って怒るお母さんの顔が浮かんだけど。
 手に飲み物を持ったまま、ぴょんぴょん飛び跳ねるわけにもいかないし。
 おしくらまんじゅうでもしているみたいな場内は暑いし。
 音に圧しかかられるみたいな感覚に鼓動は早くなってくるし。
 ふっ…とステージが暗くなったときには氷までガリガリかじっているしまつ。
 もちろんカップはもう空っぽだ。
「ふぅ…」
 場内が明るくなったら天井のスピーカーから音楽が流れてきた。
「終わったの?」
「うん。セッティングして、次がオーラス。うちのバンドや」
 言っていることはわかるけど、まだ耳がうぉんうぉんしてる。
「なんか…耳が……」
 耳たぶをこすったらタッチャンが豪快に口を開けて笑ったので、あたしも笑い返しておいた。
「おかわり、持ってきたるわ。待っとってね」
「うん」
 ひとたちが動いて、うしろのドアからも新たにひとが入ってくる。
 みんながぐいぐい前に行くのはゾンビのバンドのファンだからなんだろか。
 
< 46 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop