無口な彼の熾烈な想い
「あら、瀬口さんはチョビビに気に入られたのね。この子は人見知りが激しいんだけど」

リーダーが珍しいものを見るように目を細めて言った。

なつかない大型犬が珍しくなついている、と言われて絢斗も満更ではない。

出された腹をグリグリと撫でると、チョビビは嬉しそうに尻尾を振った。

「イケメンと大型犬って絵になるね」

次に近づいて来たのは本日の主催スタッフの最後の一人、50代男性の河上さんだった。

「あら、あなたもイケメンではないけどある意味、犬猫ちゃんたちとは絵になるわよ。コミカルな意味でね」

出鼻からディスられるこの男性はリーダーである総子(ふさこ)さんの夫で礼治さんという。

普段はネコカフェを経営しているらしい。

ネコカフェでは、常時、保護猫の譲渡相談も受けていて今日もその活動の一環だそうだ。

「ネコカフェをされているんですか?私の姉夫婦も飲食店を営んでます。動物の面倒を見ながらなんて大変でしょうね」

今日は鈴の助手ということになっているのでここでは敢えて身元は明かさないことにした。

先日までフクロウカフェを検討していたフラケンである、奇遇なこともあるものだと絢斗は思った。

「いや、好きだから全く苦にはならないよ。手に負えないほどの数は引き受けないし。何より優しい飼い主に貰われていく子達をみると嬉しいからね」

チョビビの頭を撫でる礼治の顔は、仏様のように穏やかだった。

きっとこういう実力があって信念を貫き通すことができる人物しかアニマルカフェに手を出してはいけないのだろう。

動物に向き合う礼治と総子を見て、絢斗は再認識するのであった。
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